プロジェクトストーリー

自然災害との戦い
その時、どう立ち向かったか?

諸外国に比べて、地震や台風などの自然災害が発生しやすいと言われる日本。
いざ有事となれば、人びとの平穏な暮らしはおろか、
社会インフラにさえ深刻な影響を及ぼすこともある。

そうした社会の危機に立ち向かうのも、
設備の安定稼働を日々の業務とするムラテックCCSに課せられた使命だ。

1日でも早く日常を取り戻すためにー。

設備の保守メンテナンスといった通常業務とはおよそかけ離れた困難を極めるミッションだが、
それでも決してひるむことはない。
その原動力となる“想い”を、
4名の社員が経験した設備復旧プロジェクトから紐解いていく。

メンバー

阿蘇品 登
Noboru Asoshina

熊本震災にて現場対応を行い、西日本豪雨では人員配置など後方支援を実施。

CCS工機板金課プレス
2008年入社

大川 良平
Ryohei Ohkawa

台風18号、西日本豪雨にて現場対応。

CCS工機 ターニング課兵庫
2010年入社

濱崎 隆一
Ryuichi Hamasaki

熊本震災にて現場対応を行い、現在はCFA案件を多く担当。

L/C・CS工事部
1998年入社

山浦 純一
Junichi Yamaura

熊本震災にて人員采配など管理対応。現在は新しい物流機種のメンテナンスを担当。

CCS物流 九州事業所 福岡CSセンター
2005年入社

ムラテックCCSが
果たすべき使命・責任とは

村田機械100%出資のサービスエンジニアリング会社として、工作機械や物流機器の納入先ユーザーに対するアフターサービスを行っているムラテックCCS。一言でいえば、その役割は「設備を安定稼働させること」に集約される。定期点検やシステム保守といった通常メンテナンスはもちろんのこと、何か不具合が起きれば現場に駆けつけて原因を究明し、即座に修理対応する。

もちろん、ただの“メンテナンス屋”ではない。たとえばITの最新技術を活用した遠隔操作によるリモートメンテナンスの導入や、フィールドエンジニアによる提案型業務の推進など、従来のアフターサービスの枠を超えた“コンサルタント集団”としての顔を持つ。そこまでして顧客の満足度を追求し続ける理由は、社会インフラに携わる企業としての使命感と責任感に他ならない。あらゆるモノづくりを支える工作機械や、社会経済に不可欠な物流機器のメンテナンスに携わる企業として、社会インフラを守り抜くという強い想いが原動力になっているのだ。

社会の鼓動を止めないためにー。そのためにできることが設備の保全・メンテナンスであり、ムラテックCCSにとって最大限の社会貢献ともいえる。それは、当たり前の日常のみならず、たとえば災害が起こった際など「どんな時であっても」だ。

2016年4月14日熊本地震時熊本CSセンター状況

Story 01
“想いの強さ”があれば、
どんな現場も乗り越えられる

「災害地で復旧作業に携わったことで、改めてこの仕事の意義を実感しました」。そう語るのは、過去2度にわたって復旧作業を経験したフィールドエンジニアの大川だ。

2013年に発生した台風18号。それが大川にとって初めての災害対応案件だった。担当したのは、当時所属していた京滋支店が管轄するエリアのなかでも10台以上の機械を保有する大口ユーザー。浸水被害は高さ1mを超え、工場内の機械は完全水没に近い状態だった。そんな状況のなか、2〜3週間付きっきりで修理にあたった大川は当時の様子をこう振り返る。「早期の設備復旧・稼働を優先して、数人がかりで1台ずつ修理していきました。とにかく1台でも早く設備を再稼働させたい。その一心でした」。

それから5年。西日本豪雨で被害を受けたユーザーの危機を救うべく、大川は再び現場に向かった。「土砂に埋まった機械はカバーが大きく変形し、複数のボルトは完全に錆びていました。カバーを外すだけでも通常の3倍程度の時間を要したことを覚えています」。工場内は土砂の除去作業中だったため、真夏の炎天下での作業は体力的な負担も大きかったという。それでも気持ちを奮い立たせることができた理由を、大川は次のように話す。「お客様自身も泥まみれになりながら頑張っていましたから。その姿を見て、私も力になりたいと思いました」。力強く発した言葉からは、自身の仕事に対する誇りが垣間見える。

Story 02
社会の危機だからこそ、
一丸となって早期復旧に全力を尽くす

その活躍がクローズアップされるのは、最前線で復旧作業に臨む社員だけではない。福岡CSセンター所属の山浦は、応援物資の情報収集、応援要請・人員管理、復旧に必要な部品、機材、備品の手配などを担う後方支援の一員として、ある現場と向き合っていた。最大震度7を観測し、各地に甚大な被害をもたらした熊本地震である。「災害後、全138ユーザー様の被害状況を確認したところ、通常稼働あるいは復旧済みのお客様は全体の2割弱でした。熊本県に近いエリアでは電話回線が遮断されているところも多く、ようやく連絡が取れたとしても工場内に入れないお客様もいました」。

修理作業の前に、自動倉庫内で散乱している商品を撤去しなければならない。そんな現場はいくつもあった。予想を上回る被害状況のなか、山浦自身も人員管理が思うように進まないジレンマに頭を悩ませたという。それでも、余震が約1700回以上続くなかで全作業員は思いをひとつに一致団結。全国からの応援者も含めて、延べ900名以上が復旧作業にあたった。「1日でも早い復旧を望む、一人ひとりの気持ちに尽きると思います」と、山浦はプロジェクト遂行の要因を分析する。「もちろん一人では無理です。最前線にいるフィールドエンジニア、物資運搬や技術支援を担う後方支援、対策本部での一元管理など、お客様と社内各部署の一体感の大切さを実感しました」

Story 03
早期復旧のポイントは、
現場の対応力と社内の采配力

多くの人材資源が投入される災害時において、現場と後方支援のスムーズな連携が設備の早期復旧・稼働の鍵となるー。そのことを誰よりも理解しているのが阿蘇品だ。2016年の熊本地震では現場で修理作業を担当し、2019年の台風19号では後方支援として復旧作業を支えた経験を持つ。「熊本地震の時は中部地区担当のフィールドエンジニアでした。熊本は生まれ育った故郷だったので、みずから手を挙げてプロジェクト参加を志願したんです」。

地震発生から3週間後、現場入りした阿蘇品はひとまず胸を撫でおろした。「予想よりも被害を受けていなかったので」と、その胸中を語る。幸いにも修理作業は通常業務の範囲内で済んだため、3日間で全5台の設備を復旧させることができたという。その一方で「苦労しました」と話すのが、作業現場の状況の違いだ。余震が続くなかでの作業に加えて、近隣のホテルを確保できない状況に「現場での作業負担の軽減・効率化を考えると、こうした点への対策も今後の課題だと感じました」と話す。

その経験がいかされたのが、2019年の台風19号での対応だ。「対象エリアのお客様に連絡を取り、被害状況の確認とフィールドエンジニア派遣のスケジュール調整や復旧に必要な部品手配を行いました。有事の際は、現場の対応力と社内の采配が試されます。フィールドエンジニアがいかに現場での作業に集中できるか。後方支援として、その点を重視しました。」

Story 04
現場では、
何よりもスピード感が重視される

山浦や阿蘇品をはじめ、ムラテックCCS社員の多くが設備復旧に全力を尽くした熊本地震。その名の通り、もっとも被害を受けた熊本県内の某復旧プロジェクトにおいて、現場の陣頭指揮を執っていた濱崎もその一人である。「転倒した無人車に、大きく傾いた自動棚。さらには天井搬送設備のレールも大きくズレており、最初は被害の大きさに愕然としました」。

濱崎が任されたのは、クレーンや無人車を含めて数百台もの物流機器を納入している半導体工場。工場内の自社搬送設備を早期稼働再開することー。そのミッションを達成するべく、濱崎はユーザーと社内部門間のとりまとめ、そして現地での復旧作業・人員管理に奔走した。「復旧作業には何よりもスピードが求められます。サービス・工事部・営業・設計と連携を組み、適材適所にノウハウを注力しました」と当時のことを振り返る。

復旧作業を開始してから約1ヶ月。目の前には被災前と変わらぬ工場の姿が広がっていた。「全搬送ラインの復旧を祝して、お客様とセレモニーも行いました」。その晴れやかな表情からは達成感がひしひしと伝わってくる。「お客様からいただく労いや感謝の言葉は、やはり嬉しいものです。でも、それは災害地での復旧作業に限ったことではありません。動かないものを直すという根本的な部分は変わりませんし、その思いに優劣はありませんから」。

どんな時も想いはひとつ。「当たり前の日常」を守るために

4名それぞれが全力を尽くして挑んだ災害地での復旧作業。その経験は、彼らの“想い”にどのような変化をもたらしたのだろうか。「目の前のお客様のことはもちろん、その先にある経済活動にも目を向けた時に『早く復旧しなくては』という想いが強くなりました。この経験を活かして、今後もお客様に寄り添い続けたいと思います」と、大川は決意を新たにする。続けて、阿蘇品もその言葉に同調する。「熊本地震では作業終了後にお客様の全社員が写った写真、手紙、感謝状をいただきました。その時は自分の仕事を誇りに思いましたね。もちろん満足して終わりではなく、災害対応の経験を普段の業務にも還元していきたいと思います」。

豊富なキャリアを持つ濱崎と山浦も、やはり同様の言葉を口にする。「物流というのは書いて字のごとく、物が流れてこその仕事です。災害対応では、その大切さを身にしみて感じました」と濱崎が話せば、「お客様設備を迅速に復旧するための備えや訓練は、今後も継続して取り組んでいく必要があります。それが、企業理念の『お客様に喜ばれる製品の提供を通じた豊かな社会の実現』にもつながると考えています」と山浦が言葉を添える。

いずれの社員からも伝わってくるのは、自身の仕事に対する強い使命感と責任感だ。無論、それは今回活躍をピックアップした4名に限った話ではない。いつ、どこで、いかなる災害が起きた場合でも、お客様とともに全力で復旧に立ち向かう大勢のムラテック社員の姿がそこにはある。たとえ向き合う現場が違っても、想いはひとつー。「当たり前の日常を守る」という使命を果たすために、今日もムラテックCCSはユーザーとその先にある人びとの暮らしを見つめている。